はじめに
英語で聖書を読むことは、世界中のキリスト教徒にとって重要な体験です。聖書は「Bible」または「Holy Bible」と呼ばれ、キリスト教の教典である旧約聖書と新約聖書を合わせたものを指します。現代では、様々な英語版の聖書が出版されており、それぞれに特徴と歴史があります。
英語圏では、ホテルの客室にも聖書が置かれているほど身近な存在であり、多くの人々が日常的に読み、研究しています。また、聖書は単なる宗教書にとどまらず、文学や思想の源泉としても高く評価されています。本記事では、英語で聖書を読むための基礎知識から具体的な選択方法まで、包括的に解説していきます。
聖書の基本的な理解
聖書は、キリスト教徒にとって最も権威ある書物であり、信仰生活に欠かせないものとなっています。旧約聖書はヘブライ語とアラム語で、新約聖書は主にギリシャ語で書かれた原典から、長い歴史を通じて様々な言語に翻訳されてきました。英語版の聖書も、これらの原典から翻訳されたものです。
現代において、聖書の節や章が引用されることも多く、キリスト教の教えを理解する上で不可欠な要素となっています。また、「聖書」という言葉は、ある分野の最も権威ある書物やガイドブックを指すことにも使われるほど、その影響力は広範囲に及んでいます。
英語聖書の文化的影響
英語で書かれた聖書は、英語圏の文化や文学に計り知れない影響を与えてきました。特にKing James Version(KJV)は、英語の基礎を築いたとも言われており、多くの慣用句や表現が現代英語に受け継がれています。シェイクスピアの作品にも聖書の影響が見られるように、英語文学の発展において重要な役割を果たしました。
現代でも、アメリカのホテルの客室には聖書が置かれており、宿泊客が自由に読むことができます。これは、英語圏社会における聖書の位置づけを象徴する事例の一つです。聖書は大文字で始まる固有名詞として扱われ、その権威と重要性が言語レベルでも認識されています。
現代における聖書の役割
現代社会において、聖書は宗教的な意味合いを超えて、道徳的指針や人生の智恵を提供する書物として読まれています。多くの人々が、人生の困難な局面で聖書に答えを求め、その教えから慰めや励ましを得ています。また、聖書研究は学術分野としても発展しており、歴史学、考古学、言語学などの観点から研究が続けられています。
バイブリカのような組織は、世界中に神の言葉を広める活動を続けており、より理解しやすく、より早く受け取れる聖書を提供することを目標としています。誰かの手に聖書が渡されると、それは全てを変える力を持つと信じられており、この信念が現代の聖書普及活動を支えています。
主要な英語聖書の版本

英語で聖書を読むための選択肢は非常に豊富にあります。それぞれの版本には独特の特徴があり、翻訳の方針や対象読者層が異なります。歴史的に重要な版本から現代的な翻訳まで、様々な選択肢を理解することで、自分に最適な英語聖書を選ぶことができます。
各版本の特徴を理解するためには、翻訳の背景や使用されている言語のレベル、翻訳チームの構成などを知ることが重要です。また、教派による推奨や学術的な評価も選択の際の重要な要因となります。
King James Version(KJV)の歴史的重要性
King James Version(KJV)は1611年に出版された英語聖書で、英語圏のキリスト教において最も影響力のある翻訳の一つです。この聖書は、英語の基礎を築いたとされ、その美しい文体と格調高い表現は、400年以上経った現在でも多くの人々に愛され続けています。KJVの言語は古典英語(Early Modern English)で書かれており、「thou」「thee」「thy」といった古風な代名詞が特徴的です。
KJVは文学的価値も非常に高く、英語文学の発展に大きな影響を与えました。多くの有名な句や表現がKJVから生まれており、現代英語の慣用句の源泉となっています。ただし、現代の読者にとっては言語が古風すぎて理解が困難な場合もあり、これが後の現代語訳聖書の必要性を生み出しました。
New King James Version(NKJV)の現代的アプローチ
New King James Version(NKJV)は、KJVの伝統的な美しさを保ちながら、現代語に置き換えて理解しやすくした翻訳です。1982年に完成したNKJVは、KJVの格調高い文体を維持しつつ、古風すぎる表現や現代では使われない単語を現代的な表現に更新しています。「thou」「thee」などの古い代名詞は「you」に変更され、現代の読者により親しみやすいものとなっています。
NKJVの翻訳においては、原典のテキストクリティーク(本文批評)の進歩も反映されており、KJVが依拠したTextus Receptusに加えて、より多くの古代写本の証拠が考慮されています。この結果、より正確で信頼性の高い翻訳が実現されました。多くの保守的なプロテスタント教会で採用されており、伝統と現代性のバランスを重視する読者に支持されています。
Revised Standard Version(RSV)の教派横断的特徴
Revised Standard Version(RSV)は、1952年に完成した英語聖書翻訳で、プロテスタント、カトリック、正教会でも使われる教派横断的な特徴を持っています。RSVは、19世紀後半のRevised Version(RV)とAmerican Standard Version(ASV)の伝統を受け継ぎながら、20世紀の学術的な聖書研究の成果を反映した翻訳です。
RSVの最大の特徴は、その学術的な厳密性と読みやすさのバランスにあります。翻訳チームには各教派の優秀な学者が参加し、教派的な偏見を排除した客観的な翻訳を目指しました。また、RSVは後にカトリック版やOrthodox版も発行され、キリスト教の主要な教派すべてで使用される珍しい翻訳となりました。現代の多くの聖書翻訳の基礎となった重要な版本です。
現代的な英語聖書の特徴

現代的な英語聖書は、より広い読者層にアクセシブルであることを目指して翻訳されています。これらの版本は、現代的な言語使用、明確な表現、そして様々な文化的背景を持つ読者への配慮を特徴としています。学術的な正確性を保ちながら、日常的な英語で書かれているため、英語を母語としない読者にも理解しやすくなっています。
現代的な翻訳の多くは、原典の意味を正確に伝えることと、現代の読者にとっての理解しやすさのバランスを重視しています。また、考古学的発見や言語学的研究の最新の成果を反映し、より精密な翻訳を提供しています。
New International Version(NIV)の人気の理由
New International Versionは、原典に忠実で明確な現代語訳として非常に人気があります。1978年に完成したNIVは、100人以上の国際的な聖書学者によって翻訳され、その学術的な質の高さと読みやすさで広く受け入れられています。NIVの翻訳方針は「動的等価翻訳」と呼ばれるもので、原典の意味を現代英語で最も自然に表現することを目指しています。
NIVの特徴の一つは、文化的な背景の違いを考慮した翻訳にあります。古代の文化的な概念や慣習を、現代の読者が理解しやすい形で表現しています。また、2011年に改訂されたNIV(NIV 2011)では、ジェンダー・インクルーシブ(性別包括的)な表現が採用され、より現代的な感覚に配慮した翻訳となりています。世界中で最も読まれている現代英語聖書の一つとなっています。
English Standard Version(ESV)の学術的評価
English Standard Version(ESV)は、学問的にも評価が高く、現代的英訳として多くの人々に選ばれています。2001年に出版されたESVは、RSVの伝統を受け継ぎながら、より保守的な翻訳方針を採用しています。ESVは「本質的等価翻訳」という方針を採用しており、原典の文体や構造をできるだけ保持しながら、現代英語で表現することを目指しています。
ESVの翻訳チームには、世界トップクラスの聖書学者や言語学者が参加しており、その学術的な信頼性は非常に高く評価されています。特に、原典の微妙なニュアンスや神学的に重要な概念を正確に伝えることに重点を置いています。多くの神学校や聖書研究者によって使用されており、詳細な聖書研究に適した翻訳として定評があります。
Today’s English Bible(Good News Bible)のアクセシビリティ
Today’s English Bible(Good News Bible)は、英語を母語としない人々にも分かりやすい表現で翻訳されており、世界中の英語学習者や第二言語として英語を使用する人々に広く親しまれています。1976年に完成したこの翻訳は、American Bible Societyによって出版され、シンプルで明確な現代英語を使用しています。
Good News Bibleの最大の特徴は、その平易な言語使用にあります。複雑な神学的概念も、日常的な英語で説明されており、初心者でも理解しやすくなっています。また、文化的な説明や注釈も豊富に含まれており、聖書の背景を理解するのに役立ちます。世界中の多くの国で英語教育の教材としても使用されており、聖書の内容を通じて英語を学ぶことができる優れた資源となっています。
英語版聖書の選択方法

適切な英語聖書を選択することは、聖書研究や信仰生活において重要な決定です。選択の際には、個人の英語レベル、学習目的、宗教的背景、使用目的などを総合的に考慮する必要があります。また、複数の翻訳を比較することで、聖書の内容をより深く理解することができます。
英語聖書の選択は、一度決めたら永続的なものではありません。英語力の向上や学習の深化に伴って、異なる翻訳に挑戦することも有益です。教文館の洋書部のような専門書店では、これらの英語聖書を多数取り揃えており、実際に手に取って比較検討することができます。
個人の英語レベルに応じた選択
英語聖書を選ぶ際の最も重要な要因の一つは、読者の英語レベルです。初級者には、Good News BibleやNew Living Translation(NLT)のような平易な現代英語で書かれた翻訳が適しています。これらの翻訳は、複雑な構文を避け、日常的な語彙を使用しているため、英語学習者でも理解しやすくなっています。
中級から上級の英語力を持つ読者には、NIVやESVのような、より豊かな語彙と表現を使用した翻訳が適しています。これらの翻訳は、原典のニュアンスをより正確に伝えており、英語の言語的美しさも味わうことができます。最上級者や英語文学に興味のある読者には、KJVのような古典的な翻訳に挑戦することも価値ある経験となります。
学習目的による翻訳の使い分け
聖書を読む目的によって、最適な翻訳は異なります。個人的な霊性の成長や日常的な読書が目的の場合は、読みやすさを重視したNIVやNLTが適しています。これらの翻訳は、聖書のメッセージを現代的で親しみやすい言葉で伝えており、継続的な読書に適しています。
学術的な研究や詳細な聖書研究が目的の場合は、ESVやNASBのような、原典により忠実な翻訳を選ぶべきです。これらの翻訳は、原語の文法構造や語彙選択をより正確に反映しており、深い研究に必要な詳細な情報を提供します。また、複数の翻訳を並行して使用することで、原典の意味をより多角的に理解することができます。
教派的背景と推奨翻訳
キリスト教の各教派には、それぞれ推奨する聖書翻訳があります。カトリック教会では、カトリック版のRSVやNew American Bible(NAB)が一般的に使用されています。これらの翻訳には、カトリック教会が正典として認める旧約聖書の追加書籍(第二正典)が含まれており、カトリックの教義に適合しています。
プロテスタント教会では、NIV、ESV、NKJVなどが広く使用されています。特に福音派の教会では、聖書の無誤性を重視する観点から、より直訳的なESVやNASBが好まれる傾向があります。正教会では、Orthodox Study Bibleのような、正教会の伝統的な解釈を反映した翻訳や注釈付きの聖書が使用されています。教派の伝統と個人の好みのバランスを考慮して選択することが重要です。
バイリンガル聖書の活用法

バイリンガル聖書は、日本語と英語の対訳形式で構成されており、同じみことばを異なる言語で読み比べることで、聖書の豊かさをより深く感じることができる革新的な学習ツールです。このような聖書は、言語学習と聖書研究を同時に進めることができる優れた資源となっています。
新しい『バイリンガル聖書』では、英語訳に評価の高いESV(English Standard Version)が採用されており、日本語は『新改訳2017』が使われています。この組み合わせにより、両言語での正確で現代的な聖書理解が可能となります。
言語比較による深い理解
聖書の原語の意味を多様な言語訳で比較することで、新しい発見や理解が得られます。例えば、「心を尽くし」という日本語表現が、英語では「all your heart」と訳されていることから、愛を捧げる姿勢の違いやニュアンスの豊かさを感じることができます。このような言語間の微妙な違いは、原典の豊かな意味の層を理解する手がかりとなります。
また、「よきサマリア人」の譬話において、「同情」を表す英語の「compassion」という語は、単なる感情を超えた深い憐れみと行動への動機を含んでいます。このような語彙の分析を通じて、イエス様の愛の本質や聖書が伝えようとするメッセージの深さをより具体的に理解することができます。日本語と英語の表現の違いを通じて、神の言葉の多面的な意味を探求することは、実に意義深い体験となります。
英語学習ツールとしての活用
バイリンガル聖書は、英語学習者にとって優れた学習教材でもあります。既に内容を日本語で理解している聖書の箇所を英語で読むことで、文脈を理解しながら英語表現を学ぶことができます。宗教的な語彙や表現は、英語圏の文化や文学を理解する上で重要な要素であり、これらを聖書を通じて学ぶことは非常に効果的です。
また、聖書の英語は、日常会話では使用されない格調高い表現や古典的な構文が含まれており、英語の語彙力や表現力を向上させるのに役立ちます。定期的にバイリンガル聖書を読むことで、自然に英語の読解力が向上し、同時に聖書の内容への理解も深まります。音読練習にも適しており、英語の発音やリズムを身につけることもできます。
異なる英語訳の比較研究
バイリンガル聖書に慣れてきたら、異なる英語訳を比較することで、さらに深い理解を得ることができます。例えば、ヨハネの福音書1章5節において、ESVは「The light shines in the darkness, and the darkness has not overcome it」と訳していますが、NIVは「The light shines in the darkness, and the darkness has not understood it」と訳しています。「overcome」と「understood」という動詞の違いは、光と闇の関係について異なる神学的解釈を示唆しています。
同様に、ヨハネの福音書1章13節では、NIVが「born not of natural descent, nor of human decision or a husband’s will, but born of God」と訳し、「husband’s will」(夫の意思)という表現を使用することで、処女懐胎の教義を意識した翻訳となっています。このような翻訳の相違点を研究することで、聖書の英語訳には様々な神学的立場や解釈の伝統が反映されていることが理解でき、それぞれに独特の味わい深さがあることが分かります。
まとめ
英語で聖書を読むことは、キリスト教の理解を深めるだけでなく、英語力の向上や文化的教養の獲得にも大きく貢献します。King James Versionから現代的な翻訳まで、豊富な選択肢の中から自分に適した版本を選ぶことで、聖書の豊かな世界により深く触れることができます。個人の英語レベル、学習目的、宗教的背景を考慮して適切な翻訳を選択することが重要です。
バイリンガル聖書の活用は、日本語話者にとって特に有益な学習方法です。言語比較を通じた深い理解、英語学習ツールとしての活用、そして異なる翻訳の比較研究により、聖書の内容をより多角的に理解することができます。現代では、教文館の洋書部をはじめとする専門書店やオンラインで、様々な英語聖書を入手することが可能です。継続的な読書と学習を通じて、神の言葉の深さと英語の美しさを同時に味わう贅沢な体験を楽しんでいただければと思います。
